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                                             発行:2006年5月

◆ 労働・社会保険 Q&A
〜有給休暇の繰り越し分と新規発生分の指定について〜

 
 ≪相談内容≫
 年次有給休暇の消化方法について質問があります。
 年度が変わり、社員から年休申請の際、「前年度分より年休を引いてほしい」
と言われました。それに対し「そのような方法では、常に新年度の有給が手つか
ずで残ってしまい消化率が低くなるので、会社の裁量で当該年度から消化しても
らっている」と説明しましたが本人に納得してもらえません。なお、就業規則に
は消化方法については記載していません。どのように対応すべきでしょうか?
≪回答≫
 有給休暇を当該年度中に全部使用しなかった場合に、その残った年次有給休暇
はどうなるのかについて、労働基準法では規定されていません。行政解釈によれ
ば当該年度に使用しなかった有給休暇は次年度に限り繰り越して行使できるとし
ているだけです。
 この点について労働契約に特段の定めのある場合、または就業規則・労働協約
に定めのある場合はその定めによることになります。問題は何も定めがない場合
です。これには2つの考え方があり、
 一つは民法の弁済の規定(民法488条弁済充当の方法)が準用されるという
ものです。その扱いとしては以下のようになっています。
 (1) まず使用者が指定できる。
 (2) 使用者が指定しなければ、労働者は前年度分からの使用を指定できる。
    この時、使用者が同時に異議を申し立てることができる。
 (3) 異議を申し立てた場合は、法定弁済による(今年度分より使用)。
 (4) 特に両者の意思表示がなければ、今年度分より使用する。
 もう一つは学説によるもので、「前年度のものであるか当該年度のものである
かについては、当事者の合意によるが、労働者の時季指定権行使は繰り越し分か
らなされていくと推定すべきである。」さらに、「弁済の充当に関する民法489
条第2号を引用して、当年の年休の時季指定と推定すべしとの反対説があるが、
同号による必然性はない。」という考え方です。
 上記2つはまったく正反対の考え方ですが、労働基準法で決まりがないために、
どちらが正しいとも言えません。本来、あらかじめ就業規則で定めていれば、御
社の主張通りで問題はないのですが、記載がないので難しい問題と言わざるを得
ません。例えば、今までの取り扱いとして当該年度から使用していることを客観
的に証明することができれば、規定がなくても慣行として取り扱っていることで
御社の主張を通すことができると思われますが、証明することが難しい場合は、
どちらの主張が正しいとも言えず、民事上の争いとなってしまいます。
 ただし、一般的には、前年度分から使用するのが通例となっており、従業員に
有利なように、という観点から考えると、前年度分から使用するとする方が望ま
しいと思われます。

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